ホオジロザメ

ホオジロザメは、ネズミザメ目ネズミザメ科に属するサメです。
顔の頬部分が白いことから名付けられた名前で、オオジロザメとも呼ばれます。
(※正式名称はホホジロザメですが、一般的にはホオジロザメのほうが呼び名が浸透しているようなので
  このページでは表記をホオジロザメで統一しています)

英名ではGreat white shark(グレート・ホワイト・シャーク)。
映画「ジョーズ」のモデルにもなった、たぶんサメの中では世界的にも一番有名な種です。

ホオジロザメ  ホオジロザメ


<ホオジロザメの生息域>
生息海域は亜熱帯〜亜寒帯の海で、基本的には大陸沿岸を活動範囲にしています。
日本近海、オーストラリア南側、地中海、南アフリカ、アメリカ沿岸、南アメリカ沿岸まで様々。
餌になるアシカやアザラシが多い地域を活動エリアにしている個体が多いようです。


<ホオジロザメの身体的特徴>
体長4〜6メートル、体重600-2000kg程度で、
サメの中ではジンベエザメ、ウバザメに次ぐ大型種になります。
最大の大きさについては不確かながら8〜11メートルの個体の目撃証言もあり、
いろんなところでいまだ議論になっています。

 ・体の色が背中が黒、腹が白でしっかり分かれている
 ・尖った鼻先、ずんぐりした流線紡錘型
 ・通常で白目部分が確認できない真っ黒な眼
 ・上下の長さが等しい三日月型の尾ビレ
 ・正三角形の歯
 ・胸ビレの裏側先端に黒い模様がある

身体的には以上のような特徴があり、ほかのサメとは非常に簡単に区別がつきます。
比較的ネズミザメと似ていますがサイズが明らかに違うので。
あと海上から背ビレだけ見た場合はウバザメと勘違いしやすいみたいですね。

ホオジロザメ ホオジロザメ ホオジロザメ


サメの鼻先にはロレンチーニ器官という、生物の微弱な電気を探知する器官が備わっています。
しかし敏感すぎるのか、ここを触られるとサメは自分を制御できなくなっておとなしくなってしまいます。
ホオジロザメと一緒にケージなしでダイビングする際には必須の知識です。
あのホオジロザメさえもまるでネコのようなじゃれ具合。

ホオジロザメ  ホオジロザメ


<ホオジロザメの習性>
ホオジロザメの行動の特徴として、海面上へのジャンプがあります。
空中に完全に自分の体を出しきるサメはアオザメとニタリのみ。
ただし、ホオジロザメのジャンプはほかの種のようなブリーチング行為ではありません。
ホオジロザメは海面近くを泳ぐアザラシに対して下から忍び寄り、そこから急突進をかけます。
アザラシに勢いよく喰らいついてそのままの勢いで海面に飛び出してしまう、なんていうか、結果的ジャンプ。
しかし、体長6メートルの巨体が飛び出てくるさまは本当に圧巻です。

ホオジロザメのジャンプ  ホオジロザメのジャンプ


↑ホオジロザメのジャンプ動画(引用元:サメ動画まとめてみた


またホオジロザメは「賢い魚」としても有名で、実は犬や猫にも相当する知能ではないかと言われています。
広大な海の中で、餌場とそのシーズンをきちんと覚えて行動していますし、
前述したアザラシを真下から一気に突進して捕らえる戦法や、一度咬んだあと出血で相手が弱るのを待つ戦術など、
狩りの方法も沢山の失敗を重ねてより良い選択をしていくようになってるようです。


<ホオジロザメの繁殖>
ホオジロザメは基本的に単体で行動していますが、
時期によって特定の場所に集まる性質が最近分かってきました。
メキシコとハワイの間にある深海がそのひとつでホオジロザメ・カフェと名付けられました。
ホオジロザメはそこで交尾の相手を見つけている模様です。
ある意味お見合いコンパみたいな。

ホオジロザメは交尾を行う魚であり体内受精を行います。
まだ確証はありませんが、受精した精子をメスは1年以上の長期に渡って体内で保存できるのではないかと言われています。
個体数が少なくなかなか交尾の機会が恵まれない生き物が、厳しい自然を生き抜くために持った能力なのでしょう。

子供は雌の子宮の中で孵化して生まれ、ほかの稚魚や卵を食べて育ちます。
生まれた瞬間から胎仔たちは自分の兄弟を相手に弱肉強食を学ぶことになるわけです。
大海を生き抜くための帝王学って感じでしょうか。
この「卵食性」と呼ばれる方法で成長した子供ザメの体長は1メートル以上となって母親の体内から出てきます。
どれぐらいの期間を母親の体内で過ごすのかは未だにわかっていませんが、
他のサメの生態と比較すれば1年以上はかかると推測されています。

ホオジロザメの子供
↑母サメの体内から取り出された稚魚。子宮内で提供される卵を食べて胃袋が膨れあがっている


<ホオジロザメの主食と天敵>
ホオジロザメは体が小さいうちは自分に見合ったサイズの魚類、特にエイなどを食べています。
ある程度成長した後は、オットセイ、アザラシ、イルカなどの海獣類やウミガメなどを狙うようになります。
クジラの死肉に群がる様子もよく撮影されることが。

天敵は、シャチや自分より大きなサメです(自然界に限らないならば人間も含まれますが)。
よくホオジロザメとシャチでどちらが強いかという議論になりますが、比べるには体格差がありすぎです。
最大10メートル、体重6トンまで大きくなるシャチと比較されるのはちょっと可哀想。
ホオジロザメは「海中の頂点」ではなく、あくまで「魚類の頂点」であると言えるでしょう。

シャチVSホオジロザメ


<ホオジロザメと人間との関係>
そんなホオジロザメは人間にとっても危険な存在です。
毎年サーフィン中、遊泳中、潜水中などにホオジロザメによる事故が発生しています。
サーフボードが海中から見るとアザラシにそっくりで、それを間違えて襲ってしまうなんて話は有名ですよね。
ホオジロザメは決して積極的に人間を捕食しようとしてくるわけではありませんが、
海中でサメの興味の対象になってしまうと、サメはそれを咬むことによって確認しようとしてきます。
その確認のための一咬みが人間にとっては十分に致命傷になり得てしまうわけです。

日本でもホオジロザメによる死亡例が数件あります。
襲撃されたときにはっきり「ホオジロザメの仕業である」とわかるケースが少ないため、
その正確な数字は出しづらいですが、可能性が高い事件は2件あります。
ひとつは1992年愛媛県松山沖でのタイラギ漁の最中にヘルメットダイバーの男性が襲われた件。
もうひとつは1995年愛知県伊良湖沖でミル貝漁をしていた男性が襲われた件。
被害者は前者は行方不明、後者は胴体部分を咬みつかれて即死だったらしいです。
それぞれ歯形や目撃されたサメの特徴から、推測でホオジロザメであると判断されています。
→ページ下部:日本国内のホオジロザメ事件詳細


ホオジロザメに襲われる危険を避けるには、サメが近寄ってくる条件を作らないことです。
サメは生物の体液に関しての嗅覚が非常に鋭いので、出血した状態や生理中の女性は注意。
あとモリなどで突いて捕獲した魚をぶら下げたまま遊泳を続けるのは最も危険です。
人間の血液にもそうですが、魚の血液にはさらに敏感ですので。

ただし、ホオジロザメによる事故は決して世間のイメージほど多くはありません。
年間にサメ全般による事故(軽く咬まれた程度も含む)は世界で50件前後。
世界中で年間にどれだけの海水浴客がいるのかを考えればいかに少ない件数かがわかると思います。
海においては落雷事故のほうがよっぽど人の命を奪っていますし(サメ事故の5倍以上)、
人を襲った記録の件数は、虎・ワニ・蜂の足元にも及びません。
さらに言うなれば交通死亡事故なんてそれこそ世界中で毎分毎秒発生しています。

必要以上にホオジロザメに「人食い」の悪役イメージを持つのは良くありません。
映画「ジョーズ」以来、乱獲して無駄に命を奪ってきたのは人間のほうですし。
実際ホオジロザメのその数は激減し、絶滅の危惧さえされています。

ホオジロザメ  ホオジロザメ




<ホオジロザメの水族館展示>
2010年現在、水族館で人間の手によって飼育されているホオジロザメはいません。
回遊性が強いこと、大型であること、ほかの魚との同居が難しいことが理由で飼育が難しいようです。
2008年にアメリカのモントレー水族館が198日間の飼育をしたのが最長記録。
この個体はほかの魚への積極的な捕食行動が飼育のネックとなり、海に帰されたそうです。

他、日本国内では2002年に島根県立しまね海洋館アクアスで4日間だけの展示がされたことがあります。
また最近2016年1月に沖縄の美ら海水族館にて3.5メートルのオスの個体の飼育が試みられましたが、
残念ながら4日間でサメは死亡してしまいました。
世界各国で保護種指定されているだけに、
「死亡させてしまうことをわかっていて飼育するのはどうか」との批判も多くありましたが、
「飼育にチャレンジする姿勢を評価すべき」という擁護の声も上がっています。

ホオジロザメ  ホオジロザメ


<日本国内のホオジロザメのニュース>
日本国内で発生したホオジロザメに関するニュースを紹介しておきます。
報道に上がらないだけで水面下で片付けられている事件ももしかしたらほかにあるかもしれません。

@1992年3月 愛媛県松山沖 死亡事故
1992年3月8日16時頃に愛媛県堀江港から2.5km離れた沖で、タイラギ貝を採っていた40代男性が行方不明になりました。
彼は水深20mぐらいの位置でヘルメットダイバーとして漁をしていましたが、
突然、船上にいる船員に対して「至急引き上げてくれ」という緊急連絡を入れました。
船員がロープを引いて船上に戻したときには手遅れで、すでに彼の姿はなく、
そこにあったのはズタズタになった潜水服の一部だけでした。

数日前から大型のサメの目撃情報があったこと、残されていた歯の形状、現場の状況から推測して
ホオジロザメによる襲撃事故と断定されました。
サメ襲撃による死亡事故が海上保安庁で認定されたのはこれが日本国内で初めてのことです。

現場ではタイラギの貝ガラの処理を行っており、その匂いがサメを引き寄せたのではないか、
もしくは船と潜水服を結ぶ通信用ケーブルの微弱電流に引かれてやってきたのではないか、など
サメに襲われてしまった要因にはこれらのような仮説が挙げられています。

タイラギ漁 潜水具
↑タイラギ漁のヘルメットダイバー

A1996年4月 愛知県伊良湖沖 死亡事故
1995年4月9日午前10時頃、に海岸からわずか100m余りの地点で行われていたミル貝漁。
ウエットスーツ+ボンベの装備で潜水夫をしていた40代の男性がホオジロザメに襲われました。
急いで仲間が引き上げようとしましたが、体長6mのサメが男性の右肩から腹部にかけて噛み付いており、
そのまま右腕を咬みちぎられて男性は出血多量で即死しました。

B1999年7月 山口県光市室積海岸 捕獲
山口県光市の室積海岸にて1999年7月9日に体長5.3メートルの大型のホオジロザメが目撃されました。
光漁業協同組合の雄志が格闘して無事に捕獲、幸い被害者は出ていません。
この事件は全国ニュースにもなっていて、筆者も港の中を泳ぐホオジロザメの映像を観ましたが、
一緒に映っている子供と比べるととんでもない大きさでした。
→山口県光市のホオジロザメの動画

捕獲されたホオジロザメは解体され、顎骨が標本として全国いろんな場所で展示されました。
その顎骨サイズは高さ80cm、幅70cmというから驚き。
大人でも丸呑みにされてしまいそうな驚愕のサイズです。

C2005年10月 神奈川県川崎市 千鳥運河 死体漂流
2005年10月26日に神奈川県川崎市の千鳥運河にホオジロザメの死体が流れつきました。
体長4.8m、胴回り2.0m、体重1,100kgで、オスのホオジロザメとしては世界最大クラスの大きさです。
この死体は剥製化されて、現在川崎市東扇島の川崎マリエンに展示されています。

川崎市 ホオジロザメ

メキシコのグァダルペ島付近で撮影されたホオジロザメの動画:




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